第33回前立腺シンポジウム(2017年)
第33回前立腺シンポジウム
第33回前立腺シンポジウムは、第1日目の2017年12月9日(土)に「オープニングセミナー」と、「基礎部門」として指定演題の発表と教育セミナー1を行い、第2日目の10日(日)には「臨床部門」として教育セミナー2および「前立腺がんスクリーニング」をテーマに、パネルディスカッション、公募による口演とポスター発表・討論を行いました。
第1日目の「オープニングセミナー」では、公益財団法人がん研究会有明病院総合腫瘍科の高橋俊二先生から「高齢者の癌薬物療法」というタイトルでご講演いただきました。高齢者の健康状態や臓器機能の評価法、高齢者の抗癌化学療法の適応、実施に際しての注意点などを具体的にご講演いただき、実臨床にたいへん参考になりました。「基礎部門」では、前立腺がんに関連する基礎研究の指定演題7題と、当財団の2015年度研究助成受賞演題3題の発表がありました。前立腺疾患の機能性RNA解析、リガンド非依存的アンドロゲン受容体活性化機構、血中遊離DNA解析に基づく個別化医療の可能性、循環腫瘍細胞を用いた新規バイオマーカー探索、新規尿中バイオマーカーの探索など、前立腺がん、前立腺肥大症に関する最先端の基礎研究の発表があり、活発に討論が行われました。また、教育セミナー1では、大阪大学大学院生命機能研究科細胞内膜動態研究室の吉森 保先生から「オートファジーと癌及びその他の病態~その分子機構」というタイトルでご講演いただきました。オートファジーAutophagyの基本的な概念と生物における役割について、歴史的な経緯を含め、大隅良典博士のノーベル賞受賞研究の解説、様々な疾患における予防的な機能が解明されてきた最近の研究の進歩、将来の疾患対策としての臨床応用の可能性、さらには健康寿命延長への期待などについてわかりやすくご教授いただき、活発な意見交換が行われました。
第2日目の「臨床部門」では、教育セミナー2において、Department of Urology, Feinberg School of Medicine Northwestern University, Chicago, Illinois, USAのWilliam J. Catalona先生から「PSA Screening Has Changed the Natural History of Prostate Cancer」というタイトルでご講演いただきました。前立腺がんスクリーニングの米国における混乱の元凶とその影響について、検診中止による転移がんの増加などの疫学データをお示しいただき、最新の重要な研究成果、米国予防医療専門委員会の問題点など、前立腺がんスクリーニングの真実について教えていただき、実社会に極めて大きな影響を与える、素晴らしい講演をしていただきました。また、今回の臨床部門のテーマは「前立腺がんスクリーニング」でした。PSAスクリーニングの前立腺がん死低下効果が確定しましたが、今後は利益/不利益バランスと費用対効果比に優れ、QOL損失を低減させるスクリーニングシステムの構築を目指す必要があります。そのためには、わが国の前立腺がん検診の現状を評価し、研究成果を共有することで、将来の方向性について討議することは重要です。パネルディスカッションでは「国内外の最新検診ガイドラインから将来の方向性を考える」と題し、前立腺がんスクリーニングをリードしている5人の指名パネリストより講演が行われ、国内外の前立腺がん検診ガイドラインの重要な点、問題点について講演があり、わが国において、適切な前立腺がん検診システムを構築するための方向性について討論が行われました。また、公募による発表では、 検診の現状、最適な検診システム、質の高い前立腺がん確定診断のための生検方法など、37演題の研究発表がありました。
2日間にわたって開催された今シンポジウムには、300名を超える方々にご参加いただきました。全国の泌尿器科医および基礎研究者を中心に、前立腺がんの診断・治療に携わっておられる医師・研究者が一同に会し、討論を通じて意見交換ができたことは、明日からの前立腺がんの診療レベルの向上に直結すると考えられ、極めて意義深いシンポジウムとなりました。
テーマ | 【臨床部門】 「前立腺がんスクリーニング」 |
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日程 | 第1日目 【オープニングセミナー】:2017年12月9日(土) 12:35~13:35 【基礎部門】:2017年12月9日(土) 13:35~18:30 第2日目 【臨床部門】:2017年12月10日(日) 8:55~15:40 |
場所 | 東京コンファレンスセンター・品川 (東京都港区港南1-9-36 アレア品川) |
次第 | 第1日目 【オープニングセミナー】 「高齢者の癌薬物療法」 高橋俊二 (公益財団法人がん研究会有明病院総合腫瘍科) 【基礎部門】 ①指定演題(口演) 1 「機能解析」 2 「シグナル伝達・微小環境」 3 「去勢抵抗性前立腺癌の診断」 4 「前立腺肥大症」 5 「2015年度研究助成受賞課題」 ②教育セミナー 1 「オートファジーと癌及びその他の病態~その分子機構」 吉森 保 (大阪大学大学院生命機能研究科細胞内膜動態研究室) 第2日目 【臨床部門】 テーマ「前立腺がんスクリーニング」 ①パネルディスカッション 「国内外の最新検診ガイドラインから将来の方向性を考える」 ■司会 酒井英樹 (長崎大学大学院) 舛森直哉 (札幌医科大学) ■パネリスト 赤倉功一郎 (JCHO 東京新宿メディカルセンター) 沖原宏治 (京都府立医科大学) 伊藤一人 (群馬大学大学院) 深貝隆志 (昭和大学江東豊洲病院) 杉原 亨 (東京都立多摩総合医療センター) ②公募演題 口演セッション 1 「検診・PSA スクリーニング」 2 「前立腺生検」 3 「PSA・腫瘍マーカー・治療」 ポスター討論 1 「ポスター討論①」 2 「ポスター討論②」 ③教育セミナー 2 「PSA Screening Has Changed the Natural History of Prostate Cancer」 William J. Catalona, MD Professor, Department of Urology, Feinberg School of Medicine Northwestern University, Chicago, Illinois, US |
臨床部門のテーマ設定の背景
今回のシンポジウムでは、前立腺がんスクリーニングを主題にしました。PSAスクリーニングの前立腺がん死低下効果が確定し、今後は利益/不利益バランスと費用対効果比に優れ、QOL損失を低減させるスクリーニングシステムの構築を目指す必要があります。わが国の検診の現状を評価し、研究成果を共有することで、将来の方向性について討議し、現時点での最新知見を知り、討論する機会が重要です。
今回、前立腺がんの検診・診断に実際に深く関わっている多くの第一線の臨床医・研究者が一同に会し、活発な意見交換の場を提供することは極めて医学的に重要と考え、テーマを設定しました。
プログラムをご覧になる場合
第33回前立腺シンポジウム運営委員会事務局
〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-12-12 河西ビル6F
TEL:03-3340-3885
FAX:03-3340-3886
e-mail:zzkz@basil.ocn.ne.jp
運営委員長
鈴木和浩 (臨床部門・代表 群馬大学大学院)
運営委員(臨床部門)
塚本泰司 (札幌医科大学・学長)
内藤誠二 ((医)原三信病院・名誉院長)
市川智彦 (千葉大学大学院)
村井 勝 (国際親善総合病院・名誉院長)
大家基嗣 (慶應義塾大学)
運営委員(基礎部門)
小西 登 (基礎部門・代表 奈良県立医科大学名誉教授)
内藤誠二 ((医)原三信病院・名誉院長)
鈴木和浩 (群馬大学大学院)
市川智彦 (千葉大学大学院)
赤座英之 (東京大学大学院)
髙橋 智 (名古屋市立大学大学院)
白石泰三 (桑名市総合医療センター・副理事長)
酒井英樹 (長崎大学大学院)
主催:第33回前立腺シンポジウム運営委員会、公益財団法人前立腺研究財団
後援:厚生労働省、公益社団法人日本医師会、一般社団法人日本泌尿器科学会
当日の様子
「オープニングセミナー」
演者:高橋 俊二 先生
「基礎部門」開会の挨拶
小西 登 基礎部門代表運営委員
「基礎部門」指定演題
会場の様子
「基礎部門」指定演題
会場の様子
「基礎部門」教育セミナー1
演者:吉森 保 先生
「基礎部門」閉会の挨拶
鈴木和浩 運営委員長
「臨床部門」開会の挨拶
鈴木和浩 運営委員長
「臨床部門」教育セミナー2
演者:Catalona 先生
「臨床部門」
パネルディスカッション
会場の様子
「臨床部門」口演セッション
会場の様子
「臨床部門」ポスターセッション
会場の様子
(第1会場・第2会場)
「臨床部門」閉会の挨拶
村井 勝 財団学術担当理事
会場の様子
会場風景