第31回前立腺シンポジウム(2015年)
第31回前立腺シンポジウムは、第1日目の2015年12月12日(土)に「オープニングセミナー」と、「基礎部門」として指定演題の発表と「教育セミナー1」を行い、第2日目の13日(日)には「臨床部門」として「教育セミナー2」および「転移がん・再燃がんの診断と治療」をテーマに、パネルディスカッション、公募による口演とポスター発表・討論を行いました。
第1日目の「オープニングセミナー」では、大阪大学大学院医学研究科器官制御外科学の野々村祝夫先生から「進行性・再燃性前立腺癌の診断と治療」というタイトルでご講演いただきました。「基礎部門」では、前立腺がんに関連する基礎研究の指定演題9題と、当財団の研究助成受賞演題4題の発表がありました。 前立腺がんの発がんメカニズムにおける炎症、脂質代謝・糖代謝の関与、抗酸化作用による抑制の可能性、去勢抵抗性がん進展メカニズムの解明と標的治療の可能性、がん進展関連分子の同定、上皮―間質相互作用の解明、去勢抵抗性がん進展へのmiRNA役割、Xenograftモデルを用いた去勢抵抗性への進展機序解明、がん幹細胞関連遺伝子の探索と治療応用の可能性など、最先端の発表があり、活発に討論が行われました。また、教育セミナー1では、国立がん研究センター研究所エピゲノム解析分野の牛島俊和先生から「DNAメチル化異常の起源と臨床応用―胃がんでの知見から前立腺がんを考える」というタイトルでご講演いただきました。発がんに関与するメチル化の頻度が高い遺伝子の同定、DNAメチル化異常の誘発要因としての慢性炎症、サイトカインの関与、脱メチル化治療の臨床応用の可能性についてわかりやすくご教授いただき、活発な意見交換が行われました。
第2日目の「臨床部門」では、教育セミナー2において、Beth Israel Deaconess Medical Center Boston, MA, USAの Steve Balk 先生から「Progress in Endocrine Therapy of Prostate Cancer」というタイトルでご講演いただきました。去勢抵抗性前立腺がんの進展機序についての基礎的な研究成果を教えていただき、新規ホルモン薬の作用機序と治療抵抗性のメカニズムについて、最先端の知見をご紹介いただき、今後の去勢抵抗性前立腺がん治療の将来展望を示していただきました。また、今回の臨床部門のテーマは「転移がん・再燃がんの診断と治療」でした。転移がんと再燃がんの適切なマネージメントは、その腫瘍特性の多様性から、前立腺がん治療に関わっている医療者にとって、テーラーメイド治療の提供が最も難しい領域であり、適切な治療を行うためには、常に最新の知識が必要であることは言うまでもありません。パネルディスカッションでは「去勢抵抗性前立腺がん治療の現状と今後の展望」と題し、去勢抵抗性前立腺がん治療に関して、我が国で最も治療経験が豊富、かつこれまで関連する基礎・臨床研究を主体的に進めてこられた5人の指名パネリストより講演が行われ、去勢抵抗性前立腺がんに対して様々な作用機序を有する治療薬剤を用いた現時点での適切なマネージメント、将来の治療薬開発の方向性について、討論が行われました。また、公募による発表では、去勢抵抗性前立腺がんに対する、従来使用されてきた薬剤の現在の位置づけ、新規ホルモン薬と抗がん剤の初期治療効果や副作用、治療効果予測因子、骨転移マネ-ジメント、再発後の救済治療などについて、41演題の研究発表がありました。
2日間にわたって開催された今シンポジウムには、350名を超える方々にご参加いただきました。全国の泌尿器科医、放射線科医、病理医および基礎研究者を中心に、前立腺がんの診断・治療に携わっておられる医師・研究者が一同に会し、討論を通じて意見交換ができたことは、明日からの前立腺がんの診療レベル向上に直結すると考えられ、極めて意義深いシンポジウムとなりました。
テーマ | 【臨床部門】 「転移がん・再燃がんの診断と治療」 |
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日程 | 第1日目 【オープニングセミナー】:2015年12月12日(土) 12:00~13:00 【基礎部門】:2015年12月12日(土) 13:05~17:55 第2日目 【臨床部門】:2015年12月13日(日) 8:55~16:45 |
場所 | 東京コンファレンスセンター・品川 (東京都港区港南1-9-36 アレア品川) |
次第 | 第1日目 【オープニングセミナー】 「進行性・再燃性前立腺癌の診断と治療」 野々村祝夫(大阪大学大学院医学研究科器官制御外科学(泌尿器科)) 【基礎部門】 ①指定演題(口演) 1 「発癌・増殖」 2 「増殖」 3 「増殖・浸潤」 4 「CRPC・RNA発現・機能解析」 5 「研究助成受賞課題-1」 6 「研究助成受賞課題-2」 ②教育セミナー 1 「DNAメチル化異常の起源と臨床応用―胃がんでの知見から前立腺がんを考える」 牛島俊和(国立がん研究センター研究所エピゲノム解析分野) 第2日目 【臨床部門】 テーマ「転移がん・再燃がんの診断と治療」 ①パネルディスカッション 「去勢抵抗性前立腺がん治療の現状と今後の展望」 ■司会 酒井英樹(長崎大学大学院) 高橋俊二(がん研究会有明病院) ■パネリスト 三塚浩二(東北大学大学院) 坂本信一(千葉大学外学院) 西村和郎(大阪府立成人病センター) 高橋俊二(がん研究会有明病院) 三宅秀明(神戸大学大学院) ②公募演題 口演セッション 1 「CRPC・ホルモン療法」 2 「CRPC・抗癌剤治療」 3 「救済療法・診断・骨転移」 ポスター討論 1 「ポスター討論①」 2 「ポスター討論②」 ③教育セミナー 2 「Progress in Endocrine Therapy of Prostate Cancer」 Prof. Steve Balk(Beth Israel Deaconess Medical Center Boston, MA, USA) |
臨床部門のテーマ設定の背景
今回のシンポジウムでは、転移がん・再燃がんの診断と治療を主題にしました。前立腺がんの転移・再燃の適切なマネージメントは、予後に直結するため、非常に重要ですが、確立されていないことが多く、難しい分野です。再燃がんの定義と責任病変の診断、再燃がんの適切な治療のタイミングと治療方法、転移がんの正確な転移部位診断、転移がんの初期治療戦略と去勢抵抗性がんの新規治療薬を含めたマネージメントなど、疾患の多様性から、最適な治療戦略は確立されておらず、現時点での最新知見を知り、討論する機会が重要です。
今回、転移がん・再燃がんに対する、多くの治療経験を有している、第一線の臨床医・研究者が一同に会し、活発な意見交換の場を提供することは極めて医学的に重要と考え、テーマを設定しました。
第31回前立腺シンポジウム運営委員会事務局
〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-12-12 河西ビル6F
TEL:03-3340-3885
FAX:03-3340-3886
e-mail:zzkz@basil.ocn.ne.jp
運営委員長
鈴木和浩 (臨床部門・代表 群馬大学大学院)
運営委員(臨床部門)
塚本泰司 (札幌医科大学名誉教授)
内藤誠二 ((医)原三信病院・名誉院長)
市川智彦 (千葉大学大学院)
村井 勝 (国際親善総合病院・名誉院長)
齊藤 泰 (佐世保市立総合病院・名誉院長)
運営委員(基礎部門)
内藤誠二 (基礎部門・代表 (医)原三信病院・名誉院長)
鈴木和浩 (群馬大学大学院)
市川智彦 (千葉大学大学院)
赤座英之 (東京大学大学院)
髙橋 智 (名古屋市立大学大学院)
小西 登 (奈良県立医科大学)
白石泰三 (三重大学大学院)
酒井英樹 (長崎大学大学院)
当日の様子
オープニングセミナー
演者:野々村祝夫 先生
「基礎部門」開会の挨拶
内藤誠二 基礎部門代表運営委員
「基礎部門」指定演題
会場の様子
「基礎部門」教育セミナー1
演者:牛島俊和 先生
「基礎部門」閉会の挨拶
鈴木和浩 運営委員長
「臨床部門」開会の挨拶
鈴木和浩 運営委員長
「臨床部門」教育セミナー2
演者:Steve Balk 先生
「臨床部門」パネルディスカッション
会場の様子
「臨床部門」口演セッション
会場の様子
「臨床部門」ポスターセッション
会場の様子(第1会場)
「臨床部門」閉会の挨拶
村井 勝 財団学術担当理事
会場の様子
受付風景
会場の様子
データ受付
会場の様子
情報コーナー