第24回前立腺シンポジウム(2008年)
第24回前立腺シンポジウム
前立腺シンポジウムは、今回第24回より開催日数を2日間といたしました。第1日目の13日(土)は「基礎部門」として指定演題の発表を行い、第2日目の14日(日)は「臨床部門」とし、「前立腺がんスクリーニング」をテーマに、従来の公募による演題発表、ポスター討論を行いました。
第1日目の「基礎部門」では、前立腺がんに関連する基礎研究の指定演題9題と、当財団の研究助成受賞演題2題の発表がありました。発がん遺伝子、染色体転座、新しい前立腺がんモデルなどの発表や、前立腺がん発症機序の解明、治療の発展に欠かせない、最先端の基礎研究の発表があり、活発に討論が行われました。また、イブニングセミナーでは、大阪大学泌尿器科の辻村先生に、「Prostate Stem Cell Markerの同定と今後の展開」についてご講演いただき、最新の知見と将来性についてわかりやすくお話しいただき、その後の情報交換会の場を含め、活発に意見交換が行われました。
第2日目の「臨床部門」では、ランチョンセミナーにおいて、東邦大学の長谷川教授より、「エビデンスに基づいたがん検診ガイドラインの作成」についてお話しいただき、ガイドラインの歴史、作成の流れ、客観的評価方法、有効な活用法など、非常に貴重な、基盤的なお話を聞くことができました。引き続き行われたパネルディスカッションでは、「前立腺がん検診をめぐる問題の検証と展望」と題して、4人のパネリストと、「いのち、年齢、医療・政治」とのテーマで、第4回がん患者大集会の中野実行委員長による、医療を受ける側からの貴重な特別発言もありました。実際の医療現場に関わる臨床医と患者側の代表者が同じ場所で、同じ問題について討論することの意義は、極めて大きかったと言えます。公募演題には55演題の応募が寄せられ、前立腺がん検診の有用性の研究、精度管理、PSAを中心とした腫瘍マーカーの有効な使用法、前立腺生検方法の検証など、前立腺がん検診システムについての最新知見の発表と討論で盛り上がり、有用なシンポジウムとなりました。
2日間にわたって開催された今シンポジウムには、351名の方々にご参加いただきました。参加した泌尿器科医は、1日目は前立腺がんの最先端の基礎研究に触れることができ、2日目は前立腺がん検診の日本の現状・問題点・将来展望について、発表と討論を通して知ることができ、今後の方向性を確認することができました。このような前立腺がんに関連する重要なテーマについて、時間をかけてじっくり学ぶ機会は本シンポジウムの他にはほとんどなく、再び同様なテーマで議論の機会を持ちたいとのご要望も参加者から寄せられ、関心の高さを感じるシンポジウムとなりました。
テーマ | 【臨床部門】 「前立腺がんスクリーニング」 |
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日程 | 第1日目【基礎部門】:2008年12月13日(土) 12:55~18:30 第2日目【臨床部門】:2008年12月14日(日) 8:55~17:10 |
場所 | 東京コンファレンスセンター・品川 (東京都港区港南1-9-36) |
次第 | 第1日目:【基礎部門】 ①指定演題(口演) 1 「新規治療・染色体転座」 2 「前立腺癌モデル・予後因子」 3 「研究助成受賞課題」 4 「遺伝子多型・増殖メカニズム」 ②イブニングセミナー 「Prostate Stem Cell Markerの同定と今後の展開」 辻村 晃(大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学泌尿器科) 第2日目:【臨床部門】 テーマ「前立腺がんスクリーニング」 ①パネルディスカッション 「前立腺がん検診をめぐる問題の検証と展望」 ■司会 内藤 誠二(九州大学大学院) 長谷川友紀(東邦大学医学部社会医学講座) ■パネリスト 赤倉功一郎(東京厚生年金病院) 賀本 敏行(京都大学大学院) 古賀 寛史(原三信病院) 伊藤 一人(群馬大学大学院) ■特別発言 中野 貞彦(第4回がん患者大集会 実行委員長) ②公募演題 口演セッション 1 「住民検診」 2 「検診システムと再生検の適応」 3 「検診がんの臨床病理学的検討」 4 「PSA関連マーカーとノモグラム」 ポスター討論 1 「ポスター討論①」 2 「ポスター討論②」 3 「ポスター討論③」 4 「ポスター討論④」 ③ランチョンセミナー 「エビデンスに基づいたがん検診ガイドラインの作成」 長谷川友紀(東邦大学医学部社会医学講座医療政策・経営科学分野) |
テーマ設定の背景
日本における前立腺がん死亡者数は年々増加し、2007年には9,786人が死亡していると推定されています。一方、米国においては、1992年以降の前立腺がん死亡率は減少し続けており、2005年の死亡率は1990年と比べ34%も低下しています。この両国間の死亡率の傾向の違いは、PSAを用いた前立腺がん検診の普及率の差にあると言われています。
今回のシンポジウムでは、わが国では普及が遅れている前立腺がん検診について、わが国における現状を正確に把握し、また問題点を検証しながら、今後のさらに精度の高い、世界標準の正しい検診の実施を目指すために、「前立腺がん検診」を主題にいたしました。
日本中の前立腺がん検診に関わっている、あるいは関心のある多くの泌尿器科医を中心とする臨床医、研究者が、じっくり討論する機会を設けることは、日本の前立腺がん検診の発展に欠かせず、住民検診、人間ドック検診などのフィールドと臨床の場における寄与は極めて大きいと考え、テーマを設定しました。
当日の様子
会場
(東京コンファレンスセンター・品川)
会場の様子
受付風景
開会の挨拶
内藤誠二運営委員長
会場の様子
「基礎部門」発表風景
会場の様子
「パネルディスカッション」
会場風景
会場の様子
「パネルディスカッション」
総合討論
会場の様子
ポスター討論
情報コーナー
ひと息ホッと“コーヒーブレイク”